川口英人写真集

photobookloop.day181

川口英人 Hideto Kawaguchi「季節のない街」専門学校ビジュアルアーツ・青幻舎、2007年。

川口さんは1976年 福岡県生まれの写真家である。九州デザイナー学院 (現九州ビジュアルアーツ)写真学科卒業。

本書は第5回 Visual Arts Photo Awardにおいて大賞を受賞後、4名の審査員監修のもと 2007年に青幻舎より刊行された。版元紹介文には「かつて炭都と呼ばれた、福岡県大牟田市。古いキャバレー、極彩色に飾られたダンスホール、そこで働く異国の女たちとの交流は著者自らの青春の日々でもあった。当時も今も在り続ける街の原光景。」とある。

以前、炭鉱写真に傾倒していた頃に出会った写真集であるが、今見返して見てもこの本の稀有さがわかる。川口さんのその後の情報もなかなか探れないので、実にこのような写真はまだまだ全国に埋もれていて、探されることも脚光を浴びることもなくやり過ごされているのだと思える。そしてそれはこのアワードの意義を十分に物語っている。審査員である写真家の百々俊二氏は「希です。不思議な世界です。ここだけで宇宙です。日本は、アジアです。」、写真評論家である飯沢耕太郎氏は「日本というよりは、アジアのどこかの街をとらえたよう。時間が真空パックされて止まってしまったような地方都市の雰囲気がよく出ている。」と評している。

川口英人/Kawaguchi Hideto 季節のない街/A Town Without Seasons Visual Arts Photo Award大賞(第5回)受賞作、森山大道, 瀬戸正人, 飯沢耕太郎, 百々俊二 監修、A4変形、144頁、並製本、2007年11月刊行、青幻舎。

今日色眼鏡  ハニカムの日常を映す色眼鏡

「新年のご挨拶と新しいスローガン」

新年明けましておめでとうございます。ハニカムの新しいコンセプトスローガンは “update all” です。2019年の暮れから始まったコロナとの戦いは、世界の様々な状況を一変させてしまいました。多くの悲しみや疑心の連鎖は、人々の窓辺にも暗い影を落としています。それでも世界の街角では、多くの人々があらゆる手段を用いて明かりを灯し、希望のメッセージを掲げて、まだ見ぬ未来の姿を描こうと挑戦を続けています。私たちも今一度、窓を開け放ち空気を入れ替えて、細胞の隅々まで澄み渡った水で満たし、修復と再生の一歩を踏み出したいと思っています。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

本山周平写真集

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本山周平 SYUHEI MOTOYAMA 「日本 2010-2020」蒼穹舎、2021年。

本山さんは 1975年 熊本県八代市生まれの写真家である。2000年 東京ビジュアルアーツ写真学科研究科卒業。 2001年からは新宿2丁目の自主ギャラリー Photographer's Galleryにて活動する(2006年まで)。 2007年からの3年間 ギャラリー街道にて連続展を行う。2009年より東京ビジュアルアーツ写真学科非常勤講師。2012年 出版レーベルGRAF Publishersを設立する。これまでに国内外にて多くの個展・グループ展に出展。主な出版物に「日本2001-2010」(蒼穹舎、2010年)、「GRAF PHOTOBOOK2-東京-」 (GRAF Publishers、2021年)などがあり、主な受賞歴には、1999年 第20回「キヤノン写真新世紀」佳作、2011年 さがみはら写真新人奨励賞がある。

2010年に刊行された「日本 2001-2010」の続編として刊行された本書は、判型も同じく日本全国を訪れ中判カメラで撮影されたモノクロ写真で構成されている。前作同様際立った瞬間や、独特な風景、踏み込んだポートレレートを避け編集されているが、対象が非常に曖昧になるほどの引きの構図が特徴的なのは本書の方である。ほとんどの写真に写り込んだ人ないし動物には圧倒的に生活感があるが、対象として撮りたかったわけでは無いと言うほど風景化している。全く自分事ではない風景、日本人的な距離感のする写真、時空を超えた異邦人が写した日本の記録写真とでも言いたげな写真の数々に驚愕するのである。

現在、大阪 豊中にあるギャラリー176(布垣昌邦さんキュレーション)にて、本山 周平個展「日本 2010-2020」が開催されています。20年にも及ぶ日本各地の風景を捉えた「日本」シリーズより、新作写真集「NIPPON 2010-2020」(蒼穹舎、2021年)から、モノクロ小全紙29点の展示となっています。写真集とプリントを見比べながら見ることが出来る非常に面白い展示となっています。残り1週間です、お見逃しなく!!

本山周平 写真集「日本・NIPPON」2010-2020、242×231mm A4変型、111頁、モノクロ 94イメージ、クロス装上製本、600部、蒼穹舎、4,400円(税込)。

本山 周平 個展「日本 2010-2020」
  • 会期 : 2021年12月3日(金)〜12月14日(火)
  • 時間 : 13:00〜19:00 12月8日(水)、9日(木) 休
  • 会場 : gallery 176
  • 住所 : 大阪府豊中市服部元町1-6-1
  • 阪急宝塚線 服部天神駅(梅田から11分)下車 徒歩1分
  • https://176.photos/

Sharol Xiao写真集

photobookloop.day172

Sharol Xiao 「JOY LIKE A flower」pon ding & JWAGG、2021年。

台湾のアーティスト Sharol XiaoによるドローイングのZINEである。 福岡市美術館で開催されたNEWGRAPHY 福岡アートブックエキスポ2021(会期は終了しています)に際して刊行され、初版は50部と少ない。テキストの中でシャロルは「I obserbed myself」と語るように一環して見つめるのは自分自身であり、それは写真であってもドローイングの場合も変わらない。ただしその違いに関しても言及していて興味深い。2022年はシャロルにとって重要な一年となる。その動向に注目したい。

Sharol Xiao :JOY LIKE A flower、pon ding&JWAGG、2021年、B6サイズ、26頁、限定50部。

Newgraphy Fukuoka Art Book Expo 2021

NEWGRAPHYは、国内外の作家や出版社をはじめ、福岡の街をベースに活動するアーティストやクリエーターらが手がける創作物を「本(=アートブック)」という共通テーマで募る福岡発のアートブックイベントです。本展はメイン会場の福岡市美術館(エスプラナード)に加え、福岡市内にサテライト会場(A〜Eサイト)、YOUTH BOOTH(ユースブース)の6つの特設サイト(展覧会場)を設け、アートブックを主体に構成するそれぞれの独創空間を、街を回遊しながら愉しむことができます。

鷹巣由佳写真集

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鷹巣由佳 Yuka Takasu「mille-pèlerille(ミルペリイユ)」自費出版、2019年。

鷹巣さんは愛知県生まれ在住のグラフィックデザイナー兼写真家である。2012年デザイン事務所「211design-meme-(ミーム)」を設立。第55回富士フイルムフォトコンテストフォトブック部門審査員特別賞受賞。「写真にまつわるエトセトラ」講師。studio meme、Galerie memeを併設する「納屋橋ラボ」主宰。グループ展に「写真にまつわるエトセトラ展1・2/2015-16/名古屋テレビ塔・セントラルパークギャラリー(愛知)などがある。フィンランド・スウェーデン・デンマーク・エストニア・フランス・オランダ・ドイツ・チェコなどをまわり旅と日常の境界線や言葉にできない何かを様々な視点で表現を試みる写真と光の「現実と想像のあいだ」プロジェクトを展開。(大ナゴヤ大学 ホームページより参照、一部編集しています。)

本書は2019年 Artistas argentinos en NY Art Book Fair出展(MoMA PS1、アメリカ・ニューヨーク)に際して刊行された手製本による写真集である。ゴムバンドで纏められたボール生地の表紙にはシート文字がランダムに施されており、オリジナリティーあふれる仕上がりになっている。ジャバラ折りの見開きの中に一回り小さなブックレットがホッチキスで留めてあって、数枚めくるとまた違うブックレットがやってくる。それゆえにカレンダーの様でもあり短編小説のような味わいがある。

KYOTOGRAPHIE Satellite Event 46「センテント/connect the dots」(KG+SQUARE by Chushin room 2F-4)の展示が記憶に新しいが、世界最古のシャンパーニュメゾン・ルイナールとKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021との新たな取組みとして創設された 第1回「Ruinart Japan Award※」を受賞し、フランスでのアート・レジデンシー・プログラム(滞在製作)の後に、来春に開催される第10回KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022において、ルイナールの展示会場にて展示を行うことが決定している。今一番旬な作家のひとりである。

※Ruinart Japan Award
Ruinart JapanとKyotographie2021が開催するインターナショナル・ポートフォリオ・レビューに作品を提出した参加アーティストの中から選ばれる。

鷹巣 由佳:mille-pèlerille、221㎜×157㎜、手製本、2019年、ジャバラ変形オリジナルポストカード付き。