鈴木敦子写真集

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鈴木敦子 Atsuko Susuki「夜明けまえ:Second Edition」自費出版、2014年。

鈴木さんは福井県生まれの写真家である。2008年 ビジュアルアーツ専門学校大阪 写真学科夜間部卒業。主な個展に、夜明けまえ(企画ギャラリー明るい部屋、東京、2010年)、red letter(森岡書店、東京 / Calo Bookshop & Cafe Calo Gallery 、大阪、ともに2013年)、眩暈(Prinz 、京都、2015 年)、lmitation Bijou(CANDLE CAFE Laboratory、東京 / Alt_Medium、東京、ともに2019年 / ビジュアルアーツギャラリー、大阪、2020年)などがある。これまでに自費出版の写真集「夜明けまえ」「red letter」がある他、2019年には「lmitation Bijou」をDOOKSから刊行している。またエプソンカラーイメージングコンテスト 写真部門 入選( 2008年)、「1_WALL」入選(2012年/ 第6回 ・2017年/第16回)などの受賞歴がある。

本書は2010年に刊行された写真集「夜明けまえ」のセカンドエディションとして、2014年に30部のみ制作されている。ざらりとした厚紙の表紙で様々な素材の紙片やブックを織り込むように、赤い細い糸で手縫いされた非常に限定感のある仕上がりになっている。またオリジナルプリントが入った薄手のトレーシングペーパーで折られマスキングテープで留められただけの小袋にも、同様に象徴的な赤い糸が縫い付けられている。赤い一本の糸はモチーフとして、ブック全体のデザインにも作品の中にも及んでおり、同一線上に進んで行くストーリーの中の重要な案内役を務めている。一本の糸を境界線としてその上と下、または外と中を真っすぐに貫いて、形や様相を変えながら終始約束された結末に向かう為につながれ終わりを迎えている。2019年に発表した「lmitation Bijou」へと到達する視点の発芽はこの頃より見え隠れしているが、本作に感じる生命の不安定な発光や、血の通った肉体の生々しいまでの潮の満ち欠けを本作には感じることができる。それだけにいじらしいぐらいに直情的だが好きである。作家の現在を知るうえで、以前の作品を知ることはこの上ない理解への懸け橋になることがあるが、実はそんなに簡単な話ではないのかもしれない。

夜明けまえ:自費出版、29.7cm×21cm、51頁、a6サイズプリント付き、並製本。Second Edithion 限定30部。

片岡俊写真集

photobookloop.day169

片岡俊 Shun Kataoka「自然を再考する / Rethinking Nature」自費出版、2021年。

片岡さんは 1984年 京都府生まれの写真家である。主な個展に「Touch」(id Gallery、京都、2010年)、「吸水」(galleryMain、京都、2016年)、「Parallel Leaves」(YAK Kyoto、京都、2018年)、「Life Works」(大阪・東京ニコンサロン、2019年)があり、2014年 KAWABA NEW-NATURE PHOTO AWARD 2014 グランプリ、2018年 東川国際写真フェスティバル 赤レンガ・公開ポートフォリオオーディション 準グランプリ、2020年 THE BACKYARD Pitch Grant 2020 ファイナリストなどの受賞歴がある。

片岡氏のWEBサイトを見ると整然と並ぶ作品群とともに、丁寧な言葉で綴られたブログがあって、読み進める内によどみなく続く文章の沼にはまり込んでしまうのである。

祖父が気に入って手を入れていた庭の様子を撮りためた「Life Works」。群馬県の山あいにある田舎町で過ごした数日間を捉えた「給水」。「Parallel Leaves」「流れ」「窓の動物」「川の中」「近所の森」など、これまでに制作されたシリーズを列挙した本書は、作家のこれまでの活動を知るうえで都合のいいカタログのようでもあるが、カテゴリーに沿った言葉と写真の収集日記のようでもある。作家の考える「自然」に対する「再考」は、きっと終わることのないテーマとしてこれからも続けられていくのだろう。KYOTOGRAPHIE 2021 POP-UP BOOKSTOREのThe Backyardのブースで、偶然この冊子を手に取ることになったのだが、念のこもった写真というのはいずれにしろ、その正体が何なのかはわからないが、思わず手が伸びてしまうだけの食い込んでくる力のようなものがあるのである。
自然を再考する、B5縦型、36頁、50部、1000円

Sharoi Xiao写真集

photobookloop.day168

Sharoi Xiao/盧小小「PURITY/帥女生」ALPHABET SOUP、2020年8月。

ニューヨークのChinatown Soup Galleryの要請で、台湾の写真家シャロル・シャオが、台北にいるハンサムな女性をセレクトして撮影した写真集である。セルフィーを得意とするシャロルが他のモデルを撮った作品が見られる極めて貴重な写真集で、見開きのカバーにはベッドの上で蛇が絡まる挑発的な内容になっている。「Sharol のPURITY シリーズはNew Yorkから続いたずっと長いテーマ」であり、大阪、台湾、東京とその後に続く展示の源流であると思われる。ニューヨークと台湾に少部数のみ出廻っているようである。ちなみに明日から福岡で短期間だが緊縛モデルとして参加した個展が開催されるそうである。お近くの方はぜひ、お見逃しなく!
A5サイズ、50頁、並製本、オールカラー。

BOUDOIR Sharol Xiao Kinbaku Photo Exhibition
  • FIVE METERS UNDER THE GROUND GALLERY
  • 福岡市中央区薬院3-7-21-B1F
  • 2021.10.22 Fri. – 10.27 Wed. 12:00~19:00 会期中無休
  • https://www.evergrey.com/

Morten Andersen写真集

photobookloop.day167

Morten Andersen(モルテン アンダーセン)「OSLO F.」 SUPER LABO、2021年。

モルテン アンダーセンは、1965年ノルウェー オスロ アーケシュフース出身の写真家である。これまでに多くの写真集を刊行しているが、2005年9月に自費出版された「OSLO F.」(Hit Me! Oslo、225x170 mm,、上製本,、224頁,、222イメージ、限定500部)は、これまで幻の写真集の一つであった。初版よりは一回り小さい版型で、内容に相違があるのかはわからないが、こうして復刻版と呼べる写真集が刊行されることは大変意義がある。最近スーパーラボの勢いが止まらないことが、うれしい限りである。2枚目の書影はモルテンのHPより借用しました。

以下、出版社の紹介文より。

「Oslo F.」は、北欧の都市の官能的な印象を表現する - 薄暗い光にやさしく浮かぶブルータリズム様式のモダンな建築、気だるく長引く昼も夜も物憂げに佇む街。困難にある人々、いかめしい建造物、過酷な天候、酒量の多さ。これが繊細な薄暮の灰色に沈むオスロなのだ。

タイトルの“Oslo F.”は、二つの映画、「クリスチーネ・F ~麻薬と売春の日々~」と「オスロ中央駅の死」から考えた。「F」が何を意味するか、解釈は自由だ。フィクション(虚構)、フォトグラフ、ファンタジー、フラワー……あるいは、都市にある「虚構」区域かもしれない。

OSLO F.の初版は作家による自費出版で、2005年に限定500部で発売された。全ての写真は2003- 2005年の間に撮影されたものだ。
187x30mm、224頁、上製本、限定800部。

シャロル・シャオ写真集

photobookloop.day166

Sharol Xiao(シャロル・シャオ)「Shower」JWAGG、2021年。

台湾のアーティストで写真家のSharol Xiaoの個展「SHAROL XIAO "SELF" PHOTO EXHIBITION」(other、福岡県福岡市)のクロージングイベントして開催された「官能シャワー」(artvideo、8分)に合わせて刊行された限定のzineである(未流通)。編集:Gio / 吉甌

http://www.hsuchunyang.com/

出版:JWAGG、撮影:Sharol Xiao。非常に能動的に活動を続けているSharolだが、近いうちに関西でも何かしらの展示に期待したい。

Sharol Xiaoは、1994年台湾台中市生まれ、現在は台北を拠点に活動するモデル、BDSMパフォーマー、映像作家兼写真家である。2014年頃よりモデル活動を始め、2017年にはコンパクトカメラを使ったセルフポートレート作品「I AM SHAROL」を発表。台湾をはじめ、日本、タイ、アメリカなどで展示を開催する。最近では、台湾の広大な自然を背景に撮影した「PURITY」シリーズや、自ら監督として制作した映像作品「Waves」「The Rocky Shore」を発表。大阪、東京、台北などで公開された。

https://sharolxiao.weebly.com/

以下ギャラリーからの情報です。

「SHAROL XIAO "SELF" PHOTO EXHIBITION」
  • 場所 : other
  • 住所 : 福岡県福岡市中央区平尾5-4-33 平尾山荘マンション 1F
  • 会期 : 2021年9月3日(金)~9月26日(日)12:00~19:00