デニッセ・アリアナ・ペレス写真集

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Denisse Ariana Pérez「Agua」Guest Editions,London、2021年。

デニッセ・アリアナ・ペレスはカリブ海生まれ、現在はバルセロナを拠点に活動するコピーライター兼写真家である。彼女の最初の写真集となる本書は、厚み30mm 重さ1.4kgと大振りだが、前小口にわずかに手がかかるようにトレーシングペーパーが4箇所挟まれており、優れた造本技術とブックデデザインに関心する。そのいずれもにテキストが印刷されており、会話をするように配置された文字組が心地よく、ポエムのようであり啓示のようにも見えるが、これまでに経験した水と自身との関係性や、水への憧憬などが語られている。142点にものぼる作品のほぼすべてが水の中 ないしは水辺で撮影されており、選択されたモデルは様々な人種に及び性別は問われていない。水瓶や花束などを手に水に身をゆだねたモデル達は皆、水からの何かしらのメッセージを伝えようとしているようにも見えるし、彼女自身が作り上げた完全で個人的な世界を表現しているようでもある。彼女の言うAguaの圧倒的な世界観におぼれてしまいそうになる、そんな一冊である。

以下彼女の文章を参照する。

“I keep coming back to water scenes. I keep coming back to lakes, rivers and oceans, I like to explore the interaction of people with water. Water can disarm even the most armed of facades. Becoming one with water is not about rushing but rather about flowing. And flowing is the closest thing to being.”

206x275x30 mm、176頁、142イメージ、上製本。カバーデザインはBlue WaterとPinc Waterの2種類があり、収益の10%がフェイスアフリカに寄付され、アフリカコミュニティーにおける水と衛生プログラムの改善に生かされるということである。

尾黒久美写真集

photobookloop.day159

尾黒久美 Kumi Oguro「HESTER」Stockmans Art Books,Belgium、2021年9月中旬発売。

ベルギー アントワープ在住のアーティスト 尾黒久美さんの2冊目の作品集「HESTER」の予約販売が始まっています。2008年 ファースト作品集「NOISE」(Le caillou bleu,Belgium、2008年)から13年ぶりとなる本作は、過去10年間の作品からのセレクションとなります。現在先行予約中ですが、通常版とSPエディション版があり、通常版の最初に出荷される44冊にはミニプリントがついてくるようです。予約は以下のサイトより。

ARTDYNE (東京)
https://artdyne.square.site/
POETIC SCAPE (東京)
https://stores.jp/search?q=kumi%20oguro&store=poeticscape
IBASHO (アントワープ, スペシャルエディションはこちらから)
https://ibashogallery.com/publications/489-hester-kumi-oguro-pre-sale-of-special-edition-with-a-signed-print/
尾黒久美 「HESTER」
  • 〇通常版
  • 263 x 210 mm、44作品、Alain Delaunois、Hans Van den Broeckによるテキスト寄稿、Stockmans Art Books (ベルギー)最初の44冊には、掲載作品どれか1点のサイン入りミニサイズプ リント(90x90 mm)付き。(どれになるかはお選びいただけません)
  • ¥6,000円 / €40
  • 〇サイン入りオリジナルプリント付きスペシャルエディション、限定100部 (プリント10種類からの選択、各10部)プリントサイズ: 170x170 mm
  • ¥18,000円 / €120
Kumi Oguro
https://www.kumioguro.com/

モルテン アンダーセン写真集

photobookloop.day158

Morten Andersen(モルテン アンダーセン)「FAST CITY」Self published / hit me records 、1999年。

モルテン アンダーセンは、1965年ノルウェー オスロのアーケシュフース(Akershus,Oslo,Norway,) 出身の写真家である。15歳の頃より友人のパンクバンドの写真を撮り、ファンジンを作り始める。その後オスロの日刊紙の暗室で働き、ミュージックプレスの撮影を続けた後、1990年 ニューヨークのインターナショナルセンターオブフォトグラフィー/International Center of Photography (ICP), New York, USA (1990-91)に学ぶ。後に旧友のKjetil AndersenとHit Me Recordsを設立、ノルウェーのバンドでレコードリリースするなどした後、写真家に専念する。これまでに多くのグループ展・個展を開催し、また多くの自費出版の写真集を刊行している。Fast City(1999年)、Days of Night(2003年)、Oslo F.(2005年)、Leira(2006年)、White Nights(2006年)、Fast / Days(2007年)、Ass time going by(2008年)、Blå skog/Blue Forest(2009年)、Jetlag and Alcohol(2009年)、Color F(2010年)、Black and Blue(2011年)、Girls just wanna have fun(2014年)、Tokyo 20002002(2016年)、Fast Cities(2018年)などが有名である。

本書の奥書には、1990年から10年間に撮影されたものを1999年に刊行とあり、ディストリビューターの名前には hit me records の文字も見え、最初期の写真集であることを物語っている。絶妙な版型に断ち切りの図版、モノクロにカラーが混じり込んでくる様相が、昼とも夜ともつかず、どこの都市なのかも判別がつかず、名前も無いような人々の人生の一部分が写し込まれているようである。のちにFast Cities(2018年)という写真集を出すが、こちらはメキシコシティー、カイロ、ムンバイ、カルカッタ、ダッカ、上海、サンパウロ、ジャカルタなどの都市と人々を捉えており、版型も大きく全編青みがかったカラー図版で埋め尽くされているが、都市の捉え方は変わっていないのかもしれない。140x185mm、104頁、58イメージ、並製本、1200部。

林田摂子写真集

photobookloop.day157

林田摂子 Setsuko Hayashida「島について / Lead to an Island」自費出版、2012年。

林田さんは東京生まれ、島根県隠岐の島在住の写真家である。2000年 東京綜合写真専門学校卒業。2006年 第27回写真ひとつぼ展(現 1_WALL)のファイナリストとなる。2012年5月より隠岐の島に移住し、図書館司書の仕事に就く。これまでの展示に、2000年「箱庭の季節」(写真[人間の街]プロジェクトPart.2、ガーディアン・ガーデン/ 東京)、2005年「風がふく、波がたつ」(Sign Gallery/ 東京、Gallery 10:06/大阪)、2007年「森をさがす」(表参道画廊/東京、Gallery 10:06/大阪)、2008年平遥国際写真フェスティバル(中国 平遥)、2009年「箱庭の季節」(The Second Stage at GG #25、ガーディアン・ガーデン/東京)、2015年「島について」2018年「岸へ」(いずれもRAINROOTS .gallery、名古屋)などがある。写真集に「森をさがす」(ROCKET BOOKS、2010年)、「島について」(2012年)、「岸へ」(WATER BOOKS、2018年)がある。

広報海士(平成24年9月)の記事によると、林田さんが隠岐の島に移住したのは、2012年の5月とあるので、本書を刊行した2月には本格的に移住に向けて取り組んでいた頃であろうか。そういうふうに見ると英題の 「Lead to an Island」がいろんな意味で響いてくる。旅人として何度か訪れていた隠岐の島の風景を自分なりに一区切りつけて、新たな思いで家を出たのだろうかと、知らない誰かの人生に想いを馳せる。今は「岸へ」が見たいなと思っている。18x26cm、カラー32点、並製本。

齋藤茜写真集

photobookloop.day156

齋藤茜 Akane Saito「たまに赤ちゃん、たまに老人」自費出版、2014年。

齋藤さんは東京都生まれの写真家である。一橋大学社会学部卒業後、大手ゲーム会社に就職。在職中から通っていた京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)通信教育部美術科写真コース在学中に「たまに赤ちゃん、たまに老人」で、 2013年 第3回キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリストに選出。2016年に「扉は外へつながっている」(新宿ニコンサロン、大阪ニコンサロン)を展示。 同展示で、2016年 第19回三木淳賞受賞。現在 2017年度三木淳賞受賞作家新作展「齋藤 茜 確かな断片」は、ニコンプラザ東京 The Galleryからニコンプラザ大阪 The Galleryに巡回中である。

本書は家にひきこもりがちだった実の妹の23歳から25歳までの2年半ほどを撮影した(蒼穹舎HPより)記録である。タイトルは「寝転ぶ妹を見て、『たまに赤ちゃんで、たまに老人みたいね』と母が言った。』ということである。作家による対象への冷静な眼差しに、やさしさや強さなどを感じることの出来る写真集である。B5サイズ、100頁、並製本、限定100部。
最新作の展示はこちら

第19回(2017年度)三木淳賞受賞作家新作展 齋藤 茜 確かな断片