藤代冥砂写真集

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藤代冥砂 Meisa Fujishiro「あおあお」赤々舎、2016年。

藤代さんは1967年千葉県船橋市出身、沖縄県在住の文筆家であり写真家である。明治大学商学部卒業。アルバイト先で写真家の五味彬氏と知り合い、2年ほどアシスタントを務める。1990年フリーとなり、1995年からバックパッカーとして世界を旅する。1999年めくるめく恋愛に踊り続けた2年6ヶ月の記録「ライド ライド ライド」(スイッチ・パブリッシング)を刊行、デビューを果たす。2000年 広末涼子写真集「Happy 20th birthday-ヒロスエ ハタチ」(マガジンハウス)にカメラマンとして参加。以後、あまたのアイドルや女優のグラビア写真に携わり、また「嵐」のファースト写真集「In a rush!」を撮っていることでも知られる。また週刊朝日の表紙撮影を篠山紀信の後を受けて撮り下ろす。2003年 南米を廻り女性たちを捉えた「肉」(集英社)を刊行、2005年度TDC賞会員部門賞を受賞する。2003年「新潮ムック月刊シリーズ」で、平成15年度 第34回講談社出版文化賞写真賞を受賞。2004年妻でファッションモデルである田辺あゆみを3年にわたり撮影した「もう、家に帰ろう」(ロッキングオン、2011年に続編)を刊行。2005年には長男を設けて葉山に移住。小説「クレーターと巨乳」「ドライブ」「誰も死なない恋愛小説」を刊行。また「新潮」にて短編「抵抗」発表。エッセイ集「合格女子」「愛をこめて」を刊行している。また2011年 東日本大震災を機に沖縄に移住。その他の写真集に「Sketches of Tokyo」(青幻舎、2016年)「山と肌」(玄光社、2017年)などがある。最近の個展に、2019年2月「Roses」(Ai Kowada Gallery、外神田)、2019年3月「3books,2eyes ,1voice and you.」Pin-Up Gallery(宜野湾市)、2020年12月「山と肌」(Nine Gallery、青山)などがある。

本書は沖縄に移住してからの5年間という歳月の中で、出会った沖縄の風景だけで構成されている。海や山の青やそして緑、沖縄の様々な場所で捉えられた自然の風景とそこに生息する生き物たち。千変万化の沖縄の景色とそこに住まう人の雰囲気だけをただただ淡々と写し撮っている。

藤原新也写真集

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藤原新也 Shinya Fujiwara「南島街道 沖縄」スイッチ書籍出版部、1993年。

藤原さんは1944年 福岡県門司市(現北九州市門司区)門司港地区生まれの、作家で随筆家、批評家であり写真家である。大分県別府市に移り中学・高校時代を過ごす。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻中退。1969年頃からヨーロッパ大陸を横断、トルコのイスタンブール経由でインドを旅し、写真付きのエッセイを「アサヒグラフ」に発表していく。1972年「印度放浪」(朝日新聞社)を刊行。折からのヒッピーブームもあり大反響を呼ぶ。1977年 台湾、韓国、香港の放浪記「逍遙游記」(朝日新聞社)を刊行。同書で第3回木村伊兵衛写真賞を受賞する。1981年 トルコ、イスタンブールから高野山まで400日以上かけた放浪紀「全東洋街道」(集英社)を刊行。同書で第23回毎日芸術賞を受賞する。1983年「東京漂流」(朝日新聞社)で大宅壮一ノンフィクション賞及び、日本ノンフィクション賞に推挙されたが辞退する。同年「メメントモリ」(情報センター出版局)を発表。これまでに多くの個展、グループ展を開催。最新の個展に東京・京都のライカギャラリーで開催された「華のParis」がある。その他の出版物に、「西蔵放浪」(朝日新聞社、1977年)、「印度拾年」(朝日新聞社、1979年)「印度行脚」(朝日新聞社、1982年)「丸亀日記(朝日新聞社、1988年)アメリカ日記(扶桑社、1991年)「平成幸福音頭」(文芸春秋1993年)などがある。

本書には巻頭歌「君知るや南の国 光満ちてよ悲しき肉の」に続く文章があり、当時二十代後半の作家が訪れた沖縄を、21年後に再び訪れ旅をし、次第にそれは回想録とも幻想的な物語ともつかない世界に変わっていく。旅人であるという目線で撮られた写真が文章と共に響いてくる。

ウー・リー・ウェイ写真集

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邬烈威 (Wu Lie Wei、ウー・リー・ウェイ)「最高的年代(The Best of Time )Red」Éditions Bessard,France、2020年。

ウー・リー・ウェイは 1993年中国 寧波(Ningbo,China)生まれ、杭州(Hángzhōu,China)在住の写真家である。2014年頃より突如活動を開始し自費出版の写真集を次々と刊行していく。2014年10月「HIPPIE LIFE」「狂 欢(Noun Carnival)」、2015年3月「shizhen」、8月「副作用(Side Effects)」、10月「邬烈威(WULIEWEI)」、2016年1月「口活(Blow Job)」を刊行。2015年8月には短編映画「刺猬」を発表する。2014年10月個展「这一点也不嬉皮! (It is not a HIPPIE!)」を杭州市にあるレストランで開催。2015年9月個展「杞人忧天(Alarmist)」ManTou gallery (phoenix commune.杭州市)を開催している。また多くのグループ展に作品を発表する。詩やインスタレーション、パフォーマンスアート、ソーシャルプログラムなど、写真だけにこだわらない多くのプロジェクトがあり多彩である。また「フィルム(シンフォニー)オーケストラ」と呼ばれるフィルム写真のグループを主催、アート団体「Ratings」の運営、架空のコミューン「Shut Down Studio」の設立、インディペンデント出版プロジェクト「JPEG」を主宰するなど多岐に及んでいる。

本書はフランスの出版社 Éditions Bessardから出版されているが、写真集販売ポータルサイトshashashaの紹介文にこう記してある。「“The best of times”は、偶然にも周りの友人たちの様子に注目するきっかけになりました。撮影中、彼らの人生に対する姿勢や、それぞれの思いを撮影しました。写真は自分や自分の心を照らす鏡だと常々感じています。私たちは今は最高の時期にいます。数年後彼らがどんな風に写真に写っているのか、私は幻想を抱いています。死ぬまで撮り続けようと思います。」

A4サイズ・ハードカバー・クロス装の表紙は、ゴールド、グリーン、レッド、ブルー、ブラックの5色があり、各色エディションは100部、Cプリント付き、と大変豪華な写真集となっている。また表紙をめくると「paste me」と書かれた封筒の中に、中国語で書かれた詩があり、付随する番号が書かれたページの場所に貼って初めて写真集が完成するという試みがなされている。

中国をはじめとするアジアの新進写真家が注目されて久しいが、ある特異な部分のみ強調されて、同様に発信されている部分もあり、またそれに乗っかる輩も多いのは事実である。ただ未知の作家を身近に知ることが出来るのは、まず何よりも大切なことであることもいなめない。

バオメイ写真集

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Baomei (バオメイ)「have fun (ハブ・ファン)」みらいパブリッシング、2020年。

バオメイさんは 1991年 中国広東省湛江(タンコウ)市生まれの写真家である。2014年 吉林大学珠海キャンパス国際ホテル管理専攻卒業。2015年より写真をself-mediaとした活動を開始し、特定の居場所を持たず、世界中を旅行しながらアート活動を行う。2017年ノルウェーの写真家でマグナム・フォト会長のジョナフ・ペンディクセン(Jonas Bendiksen)に師事し、廈門(アモイ)市で開催されたワークショップで入選となる。2018年11月 上海 abc アートフェアーに出展。同年11月 北京 789芸術区聚像 Spaceで個展「私の遠くからの友たち」を開催。2019年個展「Have Fun」(杭州銀塩空間)を開催。2019年9月写真集「Living the dream」を刊行。上海 abc アートブックフェア―にて展示する。同年10月 北京三影堂 Photo Fairに参加。2020年3月 個展「Love heals」(広州静山空間)を開催。その他の写真集に「私の遠くからの友たち」「見えない私」「Living the dream」「宝妹写真館」がある。

本書は写真出版.comが主催する写真出版賞の、第2回大賞と特別審査員を務める青山裕企賞をダブル受賞した作品をまとめた写真集である。作中に「(前略)小さいとき 私はよく人に 多くの理由を尋ねた。大きくなって 私は自分に 多くの理由を尋ねた。私は自分に希望して 考えてそして実現する。自分に答えを与える。(中略)以前、私は詩人と結婚したかった。その後、私は詩人になりたかった。現在、私は詩そのものになりたい。過去、私は最高の作品を作りたかった。現在、私は最高の作品が存在しないと思う。未来、私自身が自分の最高の作品。」と述べている。

リュウ・イカ写真集

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劉 怡嘉(Ryu Ika、リュウ・イカ)「A part of u/me vol.2」自費出版、2020年。

リュウさんは1994年 中国 内モンゴル自治区生まれ、東京都在住の写真家である。高校1年生の頃、写真を始める。内モンゴルで大学に通うも1年で自主退学する。日本のTV番組に興味を持ち映像制作を学ぶために、2015年 武蔵野美術大学造形学部 映像学科に進学する。ゼミで森山大道氏や志賀理江子氏の写真に触れ、次第に写真に没頭する。また授業を受けた横田大輔氏の作風に感化されたと言う。2018年 École nationale supérieure des beaux-arts(パリ国立高等美術学校)に1年間 協定留学し、現地で、個展「Puzzle Mapping」( AMAC Projects Gallery,Paris)を開催する。大学在籍時の 2019年 10月 第21回写真「1_WALL」展に「Big Brother is Watching you」を出展、グランプリを受賞する。ステートメントに「現実を見ようとすればするほど、リアルが遠ざかっていく。何もかもフラットで薄っぺらく、そして破かれやすく。人々は完璧にセットされた舞台を生きるエキストラである。」と述べている。同月、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2020 PRE 学生ポートフォリオ展にて、グランプリを受賞。同年11月 写真展「いのちを授けるならば」を、東銀座のコミュニケーションギャラリーふげん社にて開催。「友人の『自分の身体は自分のものではなく、海からの漂着物かもしれない』という言葉から着想した海辺の物語を具現化した作品」を展示、最終日には飯沢耕太郎氏との対談も実現している。2020年1月 令和元年度 武蔵野美術大学 卒業 終了制作展(鷹の台キャンパス)に出展、武蔵野美術大学卒展 ⼩林のりお 個人賞 Christophe CHARLES個人賞を受賞する。同年同校を卒業。同じ頃アーティスト集団CC Culture Centreに参加、細倉真弓氏や横田大輔氏とともにカタログ「CC20」に寄稿、同年7月には代田橋のフロットサムブックス内で開催されたブックフェアにも参加している。同年8月 銀座ガーディアン・ガーデンで開催された 第21回写真「1_WALL」受賞展に「The Second Seeing」を出展。内モンゴルで撮影された色鮮やかな人工物と自然が混在する風景や、生活する人々の写真を中心に、展示空間を舞台に転換し、空間全体を使った展示を行う。ステートメントに「私が何かを見るとき、同時に、その何かにみられるということから、決して自由になることはできない。それは、自分のなかから第二の自分(他人)を分裂し、自分という存在を『見直す』ことなのかもしれない。完全な自我を束縛するには演技が必要になる。そうやって、社会というものはつくられている」と述べている。9月2日には赤々舎の姫野希美氏とのトークショーも開催された。また会場ではZINE「Big Brother is Watching You」「A Part of u/me」を販売。同年10月 旧「シブカル祭。」の後を受けたカルチャーの祭典「P.O.N.D.」(PARCO MUSEUM TOKYO、渋谷パルコ4階)に参加。「再生」をテーマに80ページのZIN「The regeneration of Second Seeing」を制作。同年11月 バーチャル空間で開催された東京アートブックフェア2020 VIRTUAL ART BOOK FAIR (VABF)の、NewfaveブースにZINE「A part of u/me vol.2」を発表している。その他の刊行物にZINE「腸」(2018,06)、「Sacrifice」「Through」(ともに2018、04)がある。

本書は VABFのNewfaveブースで販売された限定50部のZINEである。そのステートメントに「変な話、うちは3人家族でコップが3つしかなかった。人の家に行くと、コップが用途ごとに分けられ、お茶用やお酒用と、いっぱい置いてある。それを見て自分の常識のなさを怖く感じる。そんなバカな自分がバレないように、他人を一生懸命観察し、仕草を見習い、他人から拾ったパーツを使い、自分というものを組み合わせ、まともな人間を装っていく。」と語っている。A3用紙32枚を二つ折りにしたZINEであるが、熱量があり、重層的な絵作りが特徴的である。近日赤々舎よりファースト写真集「The Second Seeing」を刊行予定。