小小Sharol写真集

photobookloop.day110

小小Sharol(シャオシャオ・シャロル) / Sharol Xiao(シャロル・シャオ)「永遠做一個可愛的人 / be kind, be good, be loving」 朋丁 pon ding(Taipei) / 洞見 Clear production(Tokyo)、2020年。

小小(Xiao Xiao) SharolことSharol Xiaoは1994年台湾台中市生まれ、現在は台北市を拠点に活動するモデル兼BDSMパフォーマーであり写真家である。2014年20歳の時に台北に移る。2017年葬儀社や救急動物病院で看護師として働く。当時4匹の猫と自宅で生活しており、自身が感染源にならぬよう仕事から帰れば真っ先に服を脱いでいたと言う。同じ頃、安価な中古のオートフォーカスフィルムカメラを手に入れ、10秒タイマー機能を使いセルフポートレイトを撮影。そうして「I am Sharol」シリーズは始まる。2018年3月Wonder Foto Days/台北国際写真交流展(松山文化クリエイティブパーク、台北)に出品。同年9月ファースト写真集「I am Sharol」(Co-Publish )を刊行。2019年1月Cefe Le Gabor(京都)、2月福岡アジア美術館「The finders 2019」(福岡)、3月Clear Gallery Tokyo(六本木)、5月谷居 Gu Ju(台北)、9月Chinatown Soup(NY)と立て続けに個展、グループ展を開催している。現在は最新作「Purity」シリーズの個展がClear Gallery Tokyoの中牟田洋一氏のプロデュースにより大阪で開催されている。

本書は「ストレートセルフィ―」と呼ばれる「ウィスキーをストレートで飲むような写真だ」と表現される。自身の内なる声に耳を傾け、自己探求と自己肯定の手段として、セルフィ―によるポートレイトや、ボディーペイントパフォーマンスを表現の場としており、映像、写真、BDSMを取り混ぜた個展を形成している。

シャロル曰く、「過去数年間の私のすべてが、この本にあります。私は、世間一般で基準とされる”美”には応えることはないと思っていますが、そもそも”美しい”とは何なのでしょうか?誰か1人によって定義できるものではないし、答えは1つではありません。自らの身体と意識と繋がることができたなら、そこに美しさがあるのだと思います。常に人を愛することは、私自身への期待であり、自分への愛でもあります。(ClearGalleryTokyoウェブサイトより)」と語っている。本書中央には表紙と背表紙のようなものがあり、真っ二つに折り返したような独特の造本が暗喩的であり挑発的であり素敵である。

☆現在大阪北浜で新作の写真・映像作品による個展を開催中!!
☆Sharol Xiao個展「SELF PORTRAIT PHOTO EXHIBITION”PURITY”」
☆2020年10月16日 – 11月3日、火曜日~金曜日 15:00~19:00、土曜日~日曜日 13:00~19:00、CLOSE: 月曜日。
☆KITAHAMA N GALLERY、〒541-0041 大阪市中央区北浜 2-1-16, THE BOLY OSAKA B1F
<主催>CLEAR GALLERY TOKYO
☆映像作品「Waves」「The Rocky Shore」「I am Sharol」(Mai Wongsawasdi制作)公開中。

SharolXiao
https://sharolxiao.weebly.com/
ClearGalleryTokyo
https://clearedition.stores.jp/
Kitahama N Gallery
https://theboly.com/cms/blog/20201016_sharol-xiao-purity/

Coca Dai写真集

photobookloop.day109

Coca Dai/戴建勇 コカダイ/ダイ・ジャンヨン(Dai Jianyong)「Judy Zhu By Coca Dai/朱凤娟」麻痹公司、2018年。

コカダイこと戴建勇(ダイ・ジャンヨン)は、1976年中国江西省(Jiangxi)武源県(Wuyuan)生まれ、現在は上海在住の写真家である。上海大学美術学院卒業。2000年よりフリーランスの写真家として活動する。2010年北京草場地春写真祭出展。2012年平陽国際写真展出展、受賞者となる。2015年「Judy Zhu 2008-2015」を制作。Jimei x Arles国際写真フェスティバルや、上海ビエンナーレなど、国内外のグループ展や個展に出品する。主な展示に、 2019年「Summer of Love」Shanghai Center of Photographyや、「Lianzhou Foto Festival 2019」 Shanghai Center of Photographyがある。

本書は作家の妻となる朱凤娟 (ジュディ・チュー)を、出会いから恋人時代を経て、妊娠、出産、カトリック改宗などを経験し、母親となるまでを撮影している。2008年から2015年までの8年間、登場人物はほぼ妻のジュディだけであるが、やわらかなフィルムで撮る写真にはストーリー性がある。濃密で愛情にあふれる幸福な瞬間や、怒りや驚きに満ちた顔、たまに見せるエキセントリックな状況や涙が残る瞳、退屈や憂鬱の日常を、写真家は残酷なほど情熱的に描写し、単純なドキュメンタリーを超えて、第三者的な傍観者を決め込んでいるようで、写真家としての妥協のなさが垣間見れる。あるインタビューに答えて⁣「何かを写真に撮ることは愛の一形態だと思います。何かを見て、ああ、かっこいい!と思って写真を撮るだけではありません。 妻が子供を産んでいる間に写真を撮る、私の子供を写真に撮る、妊娠中に写真を撮る、それは写真を撮るだけではありません。それはもっと何かです。その『もっと』は正直で個人的な写真の力です。」と述べている。

松木宏祐写真集

photobookloop.day108

松木宏祐 Kousuke Matsuki「群青」自費出版、2017年。

松木さんは1983年大阪府吹田市生まれ、現在は東京都目黒区在住の写真家である。吹田東高校在学中に報道カメラマン・沢田教一氏の「安全への逃避」にカルチャーショックを受け、写真に興味を持ち始める。2006年大阪芸術大学芸術学部写真学科(土田ヒロミゼミ)卒業。2007年上京。スタジオ勤務を経て、2009年木寺紀雄氏に師事。2012年よりフリーランスとなる。スタジオ在籍中にMotoko Work Shop 2008に参加し、翌年「Motoko Work Shop 2008 Exhibion ーいま むかし これから」(KANZANあきち、赤坂)に出展。2008年「富士フィルム フォトサロン新人賞2008 発表展」(富士フォトサロン)にて、奨励賞(姫野希美選)を受賞する。同年第一回塩竈フォトフェスティバル Phat photo賞を受賞する。その他の展覧会に、2004年「生と死と性と私と精子に捧ぐ青春時代」(Beats Gallery、大阪)、2005年「Young Japanese Photographers」(名護博物館ギャラリー、沖縄)。2017年「群青」(ES gallery、表参道)。2019年「ポートフォリオマッチング展」(72gallery Numero、東京)などがある。現在はSPRiNG、CREA、&premiumなど、多くのカルチャー誌やファッション誌、広告、CF、CDジャケット、MVを中心に活躍している。 2020年3月には、生まれ育ち、写真を始めた高校生の終わりくらいから、23歳で上京するまでの青春時代を過ごした吹田の地で、影響を受けた地元の友人達との日々をテーマにした作品「ニュー・ホーム・スイート・タウン」(Galerie de RIVIERE、吹田)を開催している。

本書は作家が上京前から妻の妊娠までの期間を捉えた写真で構成されている。作家のキャリアや人生において非常に重要な時期の、私的な日常の風景を赤裸々に綴っている。あとがきに寄せて「群青とは、青が濁ってしまったのか 青が濃くなったのか 自分自身ではわからないが、青さだけではなくなってしまった 今の自分の色なんだと思う。」と語っている。プロカメラマンとして忙しく写真を撮る現在、「自分の写真を撮ってはいたが、まともに何年も見ていなかった」と話す当時の記録を改めてひもといて、写真集にまとめ、個展として見せたのには、それなりの決意と意義があるに違いない。写真表現と自己との在り方を模索した十数年の記録であり、笑いと涙にあふれる愛の賛歌である。

中野道写真集

photobookloop.day107

中野道 Michi Nakano「あかつき/Akatsuki」自費出版、2020年。

中野さんは1989年アメリカ ノースカロライナ州生まれ、現在は東京を中心に活躍する写真家であり映像作家である。 上智大学大学院文学研究科修士課程修了。2015年よりフリーランスとなる。BRUTUS、 Dew、リンネルなどの雑誌編集に携わるほか、AMUSE、GAP、Spaceshower TV、YKK APなどの広告写真を多く手掛ける。またLOVE PSYCHRDELICOや雨のパレード、ディーン・フジオカ 、藤原さくらなど、アーティスト写真を多く撮影する。またYkiki BeatやASIAN KUNG-FU GENERATIONなどのPVの撮影を担当。現在も幅広い分野で活躍する。以前インタビューに答えて「写真や映像をライフワークとしていますが、ミュージシャンや作家を志望していた過去を持ち、昔音楽でやろうとしていたことを、今写真でやっているつもりです」と述べている。

本書は家族や街の風景などを中心に、日常のふとした瞬間に撮影されたカラー図版123点で構成されている。本書に対して「この本の写真は2015年から2020年頃にかけて撮影したものだ。月日も経って環境も変わったけど、相変わらず僕はちょっとしたことで浮かれたり落ち込んだりしている。そんな何でもない日々も過ぎ去ってしまうと輝いてみえるのは何故だろう。止まっているように見えた僕の時間も確実に流れているのだ。」と語っている。また「過ぎ去った日々の中には、始まりと終わりがあった。変わって行くもの、変わらないものがあった。そんなすべてが繋がって、今日も新しい朝を紡いでいる。」とも述べている。「あかつき」とは、太陽の昇る前のほの暗い時間帯を差すが、夜が終わろうとし朝が始まろうとする時間、すべての物事の成り立ちが止まらない時間の中にあるということ。そしてそれは始まりも終わりもない完全な一体の世界で行われていることを、「全一性」として捉えている。ハードカバー 変形スイス装が非常に美しい。

Bing Nv写真集

photobookloop.day106

Bing Nv(Sickgirl-病女)「Embers」Bromide Publishing/Hong Kong、2016年。

Bing Nv(Sickgirl-病女)は、1998年中国南西部の都市 貴州省(Guizhou) 貴陽市(Guìyáng)生まれの写真家である。12歳で写真を始める。2015年に北京に移り、2017年には貴陽市に戻っている。2015年北京で開催された「Three Shadows Photography Award(三影堂摄影艺术中心)」の最終候補となり展示を行う。また上海で開催された「XITEKフォトコンテスト」のニュータレント賞候補となり展示を行っている。2018年「APERTURE FOUNDATION PHOTOBOOK AWARDS / MOPLA PHOTO BOOK EXHIBITION」(カルフォルニア) に「Embers」を出展。これまでに「Rebuild」(自費出版、2015年)、「 Detachment」( Zhejiang Photographic Press/Three Shadows Photography Art Centre, 2015年)、「Wonderful Human」(自費出版、2015年)、「Embers」 (Bromide Publishing、2016年)、「Dashan」(自費出版、2017年)、「Ten directions」 (Zhejiang Photographic Press/Three Shadows Photography Art Centre, 2018年)を刊行している。

本書は作家の言う「16歳から18歳までの」「苦痛の日々の記録」である。「未熟な心はさまよううちに、美しい仮面をまとわせることで、酷い現実と向き合えるようになりました。」と続く。非常に個人的な記録のようであるが、普遍的な現代中国の若者が直面している真実として、捉えることも出来るのかもしれない。自然の中で戯れるありのままの自身の姿を記録している前半とは打って変わって、後半は畳みかけるように「滅亡」への挑発的な希求や、「生」へのあくなきデモンストレーションなのか、不完全で何事にもなりえない現実への慟哭か、作家が写真にこめた意図は計り知れないが、とてつもなく悲痛である。「Embers」とは残り火の意である。