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4月5日(火) 熱狂の地、新世界の魔力

誰でもそうだが時々凝縮した一日を過ごす日があると思う。いきなり降って湧いたように出来あがった台風に巻き込まれてさんざん風に吹かれてびしょ濡れとでもいうような、人はそんな1日に出会って疲れ果てるのである。

最近なんだか毎週のように通天閣にやって来ている。今回も目的は一つなんだがいつも目的とは違う別の何かに流されて心奪われて行く新世界の魔力とはいったい何なのだろう。

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地下鉄堺筋線の恵美須町の階段を上がると真正面に今日も通天閣が見えてくる。通天閣本通の入り口右側にJAZZレーベル澤野工房があり今日はそこの主宰のライブに行く。東京タワーが見えるところに住みたいという憧れを聞いたことがあるが、ぜひとも通天閣の見えるところに住みたいとは誰も言わない。今日はその麓の地下にあるSTUDIO210というところに行く。通天閣歌謡劇場と言った方がよくわかる方はかなりの通の人である。

大石学ピアノソロ LIVE at 通天閣。2009年の夏に伊藤君子(vo)大石学(pf)ではじめて拝見してから彼の弾くピアノの持つ内にこもった力強さを感じずにはいられない。

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前作澤野工房から初めて出されたWishは本当に素晴らしいアルバムだった。今回は前作と同じ時にフランスで録音された新しいアルバムWaterMirrorの発売記念という一連のツアーの最終日でもある。

大石学にとってジャズピアノというのは表現出来得るすべての鍵盤の中でも、唯一つ鳴らさない鍵盤があるというような頑固さを持っていつも聞く者に対して挑戦をしているのにもかかわらず、草食動物のように私はあなたには逆らいませんというような従順そうな眼鏡の横から光る確かな眼光をちらつかせていそうなところが実に憎い。勝手にそう想像するのには全くもって何の理解も無いのだが、そういう予感がしてならない。

7:00ちょうど開演。セットリストは進み一部が終了後、二部に移る間大石学はホールの後ろに立っている、当たり前の話だがサイン攻めにあっている本人を関係者が不安そうに見守る。サインをしてもらいながらこんなことってあるのかって聞くとまあ大丈夫ですよと答えた。使いこまれた指が彼の仕事を支えている。

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終演後、懇意にしていただいてる方に近くにあるBARに招待される、前から誘われていたので何度も断るわけも行かないので、とりあえず一杯だけということで覗いてみることにした。BER BABYいかにも古くて入りにくそうな面構えに前から何度もそのドアを開けることを戸惑っていた、あいにく席をはずされていたのでまた後で寄りますと伝えて、そうだお腹がすいたなってことになって店を探した。

カラオケ居酒屋メンソ―レ沖縄という店がある、いつもこういう怪しい店に心が躍る、中に入るとそこは沖縄県人会しか入れないのかというぐらいのザ・オキナワな感じなのでたじろぐ。比嘉さんだの金城さんだのが飲んでる中、あんた沖縄かって聞かれる。どう見ても大阪ンな感じに見えてるはずなのに。

その後なんでカラオケ居酒屋だと言うことが良くわかった。エイサーだの何ちゃら節だのが唄われそれに合わせて女性陣は踊っている、そして勝手に主人公になって日本について語っている。そうこれがネイティブ沖縄なのである。

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そして来週には沖縄の本島に里帰りして来るという娘さんの熱唱LIVEのような状態になる。もう一時間、もうそれはちょっと寄ってみましたと言う感じではない。琉球という泡盛を飲み残波の壺酒を飲んで店をでる。出る時お愛想をしてあんたまだ歌ってもらってないねと言われてまたたじろぐ、今度にすると店を出るまでさんざん言われて困り果てる。でもまた来ることにする。

さてBARに戻って入ろうかという段になってもやっぱり常連オンリーの店に躊躇する。そうこうしていると中からドアが開いてほら入ってと知り合いの人が招き入れてくれる。なんでわかったのかとあっけにとらわれていると中からカメラで見えてたとマスターはそういう。

しばらく誘っていただいた方にお礼を言い、談笑をしてカウンターに向き直ってそろそろオーダーをと思ったところでグラスが出された。ハイボールをもらおうと思ってたと言うとこれがそうだ言う。そう言うと思ってましたと言われた。どうして分かったんですかと聞くと顔に書いてありますと言われた。飲みすぎなのか?そうか、マスターと言うのはそういうものなのかと思った。

奥にはお歴々達が一杯座っている、少し挨拶はしたが出しゃばるわけにはいかないので2杯だけいただいて丁寧に挨拶をして店を出た。このバーは歴史もあり素性もしっかりとしているので常連もマスターも店の雰囲気をしっかりと守っている、店の扉を開けていらっしゃいと言われれば良いが、会員制なのでと言われれば出入りを許してもらえないような店だ。どうやって次回は入っていいのかまた入り口でつったったままになる。

こうやって短い時間でめっぽう濃い空気の中を歩くと随分と疲れる。翌日重い体をベッドから救い出して会社まで向かわせるまでに時間がかかる。でもまたあの熱狂の地に足を向かわせないわけにはいかない日が近いうちにまた来ると思う。

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