トップバナー

4月13日(水) 天空の白鷺あらわる

瓦総数80,506枚、その内、平瓦約40,000枚、丸瓦20,000枚、軒平 丸瓦約1,400枚、鬼瓦62個、鯱(しゃち)瓦12個、総重量約52トン、塗り替えられる漆喰(しっくい)約6,400㎡、使用する土の量約686㎡。

餃子一日3万個みたいな話だが、これらは2009年から始まった国宝姫路城 平成の大修理に使われる資材の一部である。今回は昭和31年から始まり昭和39年に完成した8年にもおよぶ昭和の大修理から47年ぶりに行われる大工事になる。

写真

昭和の大修理・素屋根の様子

昭和の大修理は築城以来初めてである天守閣をすべて解体し、その基礎石も取り除き、新たにコンクリートの基礎を打って、その上に新しい大柱を建て換えてまた組直すという大工事であったと記されている。姫路市立城郭研究室のサイトに行けば今も当時の工事の様子が白黒写真の画像および多数の資料とともに解説してあって興味深い。

当時お城をすっぽりと覆うようにして作られた工事用の囲い、素屋根を受注した鹿島建設は長い歴史の末に平成の素屋根も請け負っている。鹿島建設のホームページに行くと鹿島の軌跡と言うところに当時の資料とともに現在の工事の概要を詳しく知ることが出来る。

さてその姫路城であるが2008年に訪れた時の画像が残っている。その時はもうすぐ素屋根を設置するための基本工事が始まろうという頃だった。解体までにはもう一度と城を見に来たのだが、薄汚れた漆喰の壁やまだらな色の屋根瓦が見えていた。

写真
2008年の姫路城

文化財と聞くと古くて当たり前という思いが強くて、塗り替えられた朱色の柱や真っ白な壁なんかを見ると、どうしても違和感を感じてしまうのが常だが、見た目以上に木造の巨大建造物の中身は悲鳴を上げている。今回の大修理は主に漆喰の塗り替え屋根瓦の補修になる。

くすんだ漆喰はすべて塗り替えられ、傷んだ屋根瓦は一度解体し使えるものはすべてまた復元し、使えないものは新たに焼かれた播州瓦を吹き替える。素屋根が出来るまでが1年半、解体補修が3年弱、それから素屋根の解体が1年弱。概ね5年にも及ぶ工事が始まっている。

写真
平成の素屋根・天空の白鷺

天空の白鷺と名付けられた今回の素屋根は、修理の間、工事風景を間直に見れるように設計された施設である。細くて軽い鋼材をトラス風に組んだ骨組みに囲いをしてその正面には城のシルエットが描かれている。

写真
断面図
写真
エレベーターからのぞく石組

見学者は受付を済ませて、城の誕生から現在に至る400年の物語を映像で見てから、エレベーターで8Fまで登る。途中硝子張りのエレベーターの中からは石組みや五層の天守の概要を見ることが出来る。8Fではおもに屋根瓦の修理見学ができるようになっていて、鬼瓦の様子や丸瓦の先端に施された各時代の城主たちの紋入りの瓦も見て取れる。

写真
8F展示室より大天守
写真
鯱瓦
写真
歴代城字の紋の入った丸瓦

前回の修理の時にも使える瓦は全部使ったという記述どおり、おのおのの時代が交錯した修理風景を見ることが出来る。7階に下りると今度は壁の漆喰を補修する様子が見られる。この時はまだ見学が始まったばかりで工事の方も解体ではなくまだ調査と言う段階であったように思われる。そのほか漆喰の製作から施工までの細かい説明や昭和の大修理の様子、素屋根を設置するまでの様子を映像で流していたり、城を愛する者にとっては時間を費やしても見たいものだ。

写真
7F展示室より
写真
鬼瓦

もし行かれることがあるのなら事前にネット予約をする方が良いであろう。予約していても30分ぐらいは待つのに、一般で行くと日曜日なんかのお昼前後はきっと2時間程度は待つことになる。

それ以外に様々ななどを展示しているところや、初公開のりの一渡櫓(わたりやぐら)、お江の娘、千姫が暮らしていた化粧櫓など見どころも多い。それに運が良ければ姫路市のキャラクターしろまるひめに会えるかもしれない。

写真
鎧の展示室
写真
しろまる姫

今回の修理は文化遺産としての姫路城を後世に継承するだけでなく、漆喰の技術・瓦の技術・建築の技術の伝承を助けるためでもあり、さらには間近に工事を見ることによって生きた文化遺産を体験できることは大変意義深い。

それと最後に忘れてはならないのは様々な艱難辛苦の時代の中にあっても、いつの時代も人が城を守り抜いて来たということにある思う。第二次世界大戦の空襲の中、白いままでは空襲の対象になるとコールタールで黒く染めたわら縄で編んだ網で城を囲って空襲から守った市民の力

廃城令の最中競売に出されもう少しで解体される事態も何とかやり過ごし、荒れ果てた傾いた天守を何とかしようと国会陳情の市民運動が立ち上がったこと。それはもはや殿様だけの城ではなく、市民の城になって、さらには日本人の城になって世界遺産となった今では世界の城となって後世まで残されていくであろう。

この日はちょうど桜の満開の日にあたったのだが、お城に桜はよく似合う。ちょうど天守閣のてっぺんぐらいの高さから見下ろした西の丸のあたりはピンク色の衣をあちらこちららに掛けたような風情で、安寧の世の中がこのまま長く続くことを願わずにはいられない。

写真
桜と城
写真
天守より西の丸

会社情報