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5月9日(月) 岡本太郎な最近

そろそろ岡本太郎についてまとめて書いてしまおうかという思いがあるのだが、一向に何をどう書いていいものかもつかめない日々を何日も過ごして今日にいたるである。

恋愛中は周りが見えないと言うほどの熱狂の渦中にあるわけでもなく、製作意図や岡本太郎論など数多くある研究書をこぞって読みあさる風でも無く。ただ触れているというようななんとなくぬるい感じの最近ではある。

大阪難波の高島屋に「ダンス」というモザイクタイル画を3月に見に行った。元の状態以上に復元された原色のタイルの色彩に、現在に至るまでの太郎や関係者を含めた長いスパンの挑戦を感じずにはいられない。まだまだやってもらうつもりだよというような感じだ。スパルタンな芸術。

JR渋谷駅を出て階段で二階に上がり京王井の頭線に向かう渋谷マークシティー内に設置されている「明日の神話」を見に行った。アメリカの行った水素爆弾の実験の際に被爆した第五福竜丸の事件を題材に太郎が挑んだ傑作である。

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大阪高島屋 ダンス
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渋谷 明日の神話

その壮大なスケールとメキシコで一時は行方不明になっていたものを、探し出し持ち帰っては復元をした岡本敏子さんらの尽力があって今、渋谷にその姿はある。当時太郎は大阪万博に付随する工事とほぼ同じ日程でこの大作を完成させていたとはまた驚きである。メキシコと日本の大阪で彼の2つの挑戦は続いていた。

今年は岡本太郎生誕100年と言うことで様々な企画・イベントが進んでいる。NHKの「TAROの塔」もその一つで、そこには岡本太郎と一緒に時代を歩んだ岡本(平野)敏子さんの姿も含めて追うことが出来る。敏子は常盤貴子がやっている。

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NHK TAROの塔

青山にある岡本太郎記念館でも常設の展示のほか、万博当時太陽の塔の内部に展示されていた「生命の樹」の再現フィギアを展示している。製作は海洋堂である。蝋人形の屋形みたいで変な感じもする。

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岡本太郎記念館
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生命の樹
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記念館内部の様子

青山にはもう一つこどもの城という文化施設の前に「こどもの樹」というモニュメントが建つ。東京にしか似合わないというか青山の景色に埋もれるようにあいまって建っている。

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青山 こどもの城の前に建つ子供の樹

東京国立美術館では「生誕100年岡本太郎展」が開催された。絵画を中心とした作品点数が多いのがこの展示会の目玉である。対決というテーマに若干の弱さがあるが一番感銘を受けたのは映像の使い方がうまく効果的だった。彼の見た昭和と言う時代から見た過去の時代の日本との関わり、そして当時の現代と未来。見ている途中から最後まで一貫して感じることは、岡本太郎の芸術は爆発していないと言うことだ。

色の使い方も構図もすべての作品がまとまっていて、全く破綻していないという点で全てが共通する。時代を追うごとに太郎の作品が変わっていくことに気が付くが、たとえば絵具の量。細かいところまで塗られなくなった絵具の持つ意味が太郎の主張する芸術へのプロセスと一致する。なんとなくだが。

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東京国立近代美術館
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アートピース ガチャガチャに並ぶ

ここでも海洋堂が作ったフィギアが大活躍している、アートピースと銘打たれた太郎の代表作が入ったカプセルがガチャガチャで出てくる。全部で8種類何が出てくるかわからないので、みんなその場で開封してまた並んで買う。おじいちゃんもおばあちゃんも買う。普通に売ってないから何となく並んでしまう。そして売れすぎて会期途中で無くなる。規制される。再発買される。並ぶ。売り切れる。商売は大繁盛で何よりだ。

大阪に戻って、大阪万博記念公園へ行ってもう一度「太陽の塔」を見に行った。当時万博のお祭り広場の大屋根をぶち抜いて立っていた高さ70mの塔には3つの顔があることは有名だ。その中でも「過去の太陽」という顔を付けた後ろ姿が俗物的ですばらしい。ただ当時地下の展示室にあったと言われる「地底の太陽」を探して現在懸命の捜索が続けられている。一説によると岡本太郎が一番愛していた顔だというが現在は所在すらわからない。見てみたい。

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太陽の塔 過去の太陽
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EXPO70記念館

そのままEXPO‘70記念館へ、「太陽の塔 黄金の顔展」として1992年に行われた改修工事で取り外された「未来の太陽」の実物が飾ってある。どうせなら壁に付けてくれればいいのにと思うが無理なことはわかっている。太郎がいればそうしろと言うかもしれない。あとは出来れば一日も早い太陽の塔内部の「生命の樹」の復元と一般公開を切に待ち望むものである。

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地底の太陽
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未来の太陽

岡本太郎の残した芸術論を彼の作るものに対峙してうまく飲み込めるほどの寛容な心の持ち主など、彼がいた当時の日本の社会にはきっと多くないことはわかる。あれから40年以上たった今、ブームにも似たこの状況に今はあえて何も感想を交えないでこの1年、生誕100年という年を完走してみたいと思っている。その先に見えるものがあれば幸いだし、見えるものがなければまた太陽の塔でも見に行くことにする。最後に青山の岡本太郎記念館に飾られている太郎と敏子の笑顔が素晴らしいことも付け加えて・・

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太郎と敏子

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