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5月23日(月) この頃信楽が

最近何となく焼きものを手に持ってみては難しい顔をしてしまうので自分でも笑っている。数年前に訪れた陶器の手作り体験ではその才能を如何なく発揮して、待望の出来上がりに一同大爆笑をとるほど作るような才能は皆無と言っていいくらいだろう。

岡山に行った時は備前焼の壺を見て何がいいのかもわからないので壺屋にからかわれた。自分が気に入った物をいいものとして買えばいいと思うが、せめてそれなりのものをそれなりの金額で買うのに、それなりの知識も無く買えるかと思って何がいいのかと尋ねるが壺屋には通じない。

人間国宝が作る壺がいいのかと逆に聞かれたので、そりゃいいんだろう知らないけどと答えると、ひねくれた壺屋はいいものなら人間国宝をあげなくても売れるのに決まっている。売れずにつぶれそうな産地の作家にこそ人間国宝が与えられるのだよと言う。もうわけがわからない。

値段の高い焼き物は確かにいいような気がする。でもよく似た物でも結構安かったりする。安いものも高いものも良いものもそうでないものも結構NEARなのだ。要は最後は自分でわかるようにならないといけないと思い知らされる。

六古窯というものをご存じだろうか。中世から現代まで続いている陶磁器の産地で、瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波立杭・備前を総称してそう呼ぶ。その中でも常滑・信楽・丹波立杭・備前などは焼締めと言われる 1100℃を超える焼成温度で吸水性をなくすまで焼かれる技法が使われるのが特徴である。

薪や藁を登り窯や穴窯で3日~10日間長いものでは一月と言う時間をかけて昼夜問わず焼かれ、薪や藁が燃えて降灰したものが溶けて硝子質に変化して釉薬代わりになる、それを自然釉と呼ぶ。

よくある陶器が800℃程度で素焼きされ釉薬を施したのち再び焼かれるのに対して、自然釉は釉薬を使わない分窯の中の火の流れや薪や灰の種類によりさざまな色彩に変容する。

作家はそれゆへ窯のどの位置にどの器を置くのか考え、土の配合を研究し火入れを行う季節を選び、焼成温度を見極めながら窯の番をする。それでも窯を開けてみないとわからないというから自然釉にひかれる作家は多い。

故にそういうものに惚れこんでしまえば何でも高くつく。とはいえ、そんなものを選ばなければ焼き物の産地に行けば、大概は安く買えるのである。

GWに信楽の窯元を訪ねてみた。現代作家の作品が並ぶ作家市なるものが信楽陶芸の森の広場でやっていたので、これは窯元を回り歩くより楽だなと思い廻る。

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信楽陶芸の森・作家市
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信楽で買った焼き物

信楽焼きと言えどそれはそれは作家ごとにいろんな焼き方があるのに驚く。小さい砂糖入れを買った。その後野積みの薪に見とれながら窯元が集まる坂の通りを車で走ると、立派な登り窯が見えたのでふらりと寄ってみる。

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道沿いの野積の薪
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穴窯と登り窯

みはる窯というの表札を見ているとおじさんがこっちに入りと手招きをしてくれる。中に入ると奥さんが丁寧に焼き物について説明してくれる。このあたりではビードロと呼ばれる赤松の灰釉を使った見込みのところが緑色のお皿を見ながらお茶をいただいてしばしギャラリーの中を見回す。天井には昔使われていたと言う土を打って混ぜるための機構が残してあり味わい深い。

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みはる窯入り口
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土打ちの機構を残すギャラリー
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みはる窯の工房と作品

その後どうぞ窯の方も見て行ってくださいとおっしゃるので坂を登っていくと、10名ほどの人達が作業に没頭しているのが見えてくる。お話を伺うとどうも自分たちの焼き物を焼くために自ら穴窯を製作している最中だった、有志10数名で竹を編み米袋をかけて土を積んで行く。今日はちょうど竹を編む工程だった。

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みはる窯で買ったビードロの器
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竹で骨組みを作る穴窯

その後穴窯と11室ある登り窯を見学させていただき丁寧にお礼を言って出てきた。さきほど手招きをして僕たちを迎えてくれたのは実はここのご主人で神崎継春さんであったと知る。

焼締めや灰釉の作品のほかに黄瀬戸・青瓷など繊細な器も作られる。またいつかあの棚に乗っている花器を買い求めることが出来る時が来る時を待とう。

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中工房のギャラリーから
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中村氏による耐熱の器
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丸太の工房

その後中村文夫さんがやってらっしゃる中工房という所にお邪魔した。メキシコで学ばれた耐熱の器は独特の味わいがあってそしてヘビーに使える生活の器である。また若いころにお建てになった丸太の工房も趣深い。この頃信楽が熱い。下巻へ続く。

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